異文化間教育学会第42回大会報告

「オンライン合同大会という変則状況下で異文化間教育の立ち位置を見つめる」

 第42回大会準備委員長 小林亮(玉川大学)

 

 異文化間教育学会第42回大会は2021年6月12日(土)、13日(日)の日程で玉川大学にて開催されました。コロナ禍のため今年も全イベントがオンラインで行われ、さらに日本国際理解教育学会第30回研究大会との合同大会として開催されるなど異例ずくめの大会でしたが、異文化間教育学会だけで計396名が参加する盛況の会となりました。

どちらの学会の大会参加者も相手方の学会のイベントにも参加できるという「特典」をつけた結果、初めての合同大会は両学会員間のよい交流や対話の機会になりました。

大会に先立つ6月11日(金)午後のプレセミナーは武蔵野美術大学の三澤一実氏の講演を中心に「アート鑑賞による対話のデザイン―ダイバーシティを受け止める」というテーマで開催され、30名が参加しました。6月12日(土)と13日(日)の午前中は計70件の自由研究発表が行われましたが、内訳は個人発表が49件、共同発表が6件、ケース/パネル発表が1件、ポスター発表が14件でした(日本国際理解教育学会の発表は計57件)。

6月13日(日)の午後には「異文化間教育実践における社会の共創 - 葛藤を抱えつつ」というテーマで特定課題研究が開催されましたが、中国帰国者支援・交流センターの安場淳氏、千葉大学の小林聡子氏、旭川大学の齋藤眞宏氏の話題提供と中京大学の芝野淳一氏による指定討論を中心に、「ポジショナリティ」をキーワードにして異文化間教育が社会変革にどのように貢献できるのかという問いをめぐり、白熱した共同討議が展開されました。

今年は合同大会という特性を生かし、両学会の共同企画イベントがいくつか組まれたことも特色です。6月12日(土)午前中には、公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)によるワークショップ「国際交流で変容する学びを」が提供され、教職員国際交流事業の事例紹介がなされました。昼休みには合同若手交流会「学会を越えてつながろう」が開催され、両学会の若手研究者の相互交流と情報共有の場となりました。午後2時からは公開シンポジウムが開催されました。ユネスコ本部の斎藤珠里氏による基調講演をはじめ、ユネスコ、異文化間教育学会、日本国際理解教育学会の三者がSDGs目標達成に向けてどう連携してゆけるかについて多角的な議論が展開されました。午後5時半からは情報交換会が行われ151名が参加しましたが、各団体代表者からの挨拶に続き、テーマ別の「ブレイクアウトルーム」で熱のこもった交流や議論で親睦を深めることができました。

オンライン大会という制約はありましたが、ワーキングチームの先生方の多大のご支援を得て、ユネスコ、日本国際理解教育学会、ACCUとのコラボを通じ、新たな時代状況における異文化間教育の役割について見つめ直すよい機会になったのではないかと思います。