「移動」から異文化間教育研究を展開する
ー象徴的移動に着目してー
研究委員会
2023年度の特定課題研究テーマは「『移動』から異文化間教育研究を展開する―象徴的移動に着目して―」です。昨年度から特定課題研究をより参加型にしていくためにテーマに対する発表公募を行っています。多くのご応募をお待ちしております。
主旨
昨年度に引き続き、本年度も会員の皆様により広くご参画いただくべく、特定課題研究発表の参加者を募集します。今回の応募の中からいくつかを採択し、今秋から非公開及び公開研究会を重ねて2023年の本大会にて発表を行います。その後、2024年3月刊行予定の学会誌『異文化間教育』の大会特集号に向けて論文投稿(査読有)を行うまでが参加要件となります。 皆様の積極的な応募をお待ちしております。
テーマ概要
昨年度の特定課題研究では、移動する人々の経験を捉えるための研究方法論について理解を深めた。議論を通して、現象の存在論・認識論を含む研究方法論を精査することの重要性が確認された。しかし、「移動」そのものをどのように捉えるのかについては十分に検討できたとはいえない。そこで、前年度の成果を踏まえつつ、本年度は「『移動』から異文化間教育研究を展開する−象徴的移動に着目して−」をテーマとして設定する。
これまで異文化間教育学では、移動する子ども・若者に関する研究が膨大に蓄積されてきた。それらの多くは、国家間の物理的移動に関与する海外帰国生、移民二世、留学生などを対象とし、かれらが経験する教育の問題を明らかにしてきた。
しかし、人々が経験する移動は、物理的なものに限らない。私たちは、ある場所からある場所への移動だけでなく、ある立場からある立場、ある時からある時、ある状態からある状態への移動といった「象徴的移動」を日常的に経験している。これまで異文化間教育学では、このような象徴的移動を等閑視してきたきらいがないだろうか。無論、これらの移動は単独で経験されるわけではなく、物理的移動を含めた複数の移動が交差し合う中で経験される。こうした象徴的移動を問うことの重要性は、物理的移動が制約されるコロナ禍において一層高まっているといえよう。
本特定課題研究では、この象徴的移動を切り口として、異文化間教育研究における移動の多様性と複雑性を捉えるための議論を展開したい。異文化間教育学会が自明視してきた「移動」に着目することで、異なる文化の間に生きる子ども・若者の経験に対する理解を深めることはもちろんのこと、かれらの経験をより豊かに分析・記述したり、かれらに対する教育実践の再構築を促したりすることが可能になるだろう。また、多様な研究者が「移動」という概念のもつ可能性を議論することで、学問分野間の対話や相互理解が深まり、異文化間教育学における学際性(transdisciplinary)の醸成につながることも期待される。
以上を踏まえ、本特定課題研究では、象徴的移動に着目した幅広い視点・立場からの論考を募集する。象徴的移動として捉え得る現象(例えば、発達段階や学校段階の移動、社会的地位の移動、抑圧状態から解放状態への移動、感情や思考の移動など)を扱うものであれば、どのような研究テーマでも構わない。また、研究対象についても、移民背景をもつ人々や人種・エスニシティに着目したものに限らず、ジェンダー、セクシュアリティ、宗教、障がいといった多様なトピックを扱った研究も歓迎する。
本議論に寄与する意欲的な研究をお待ちしています。
要旨締切
2022年9月21日
応募先
https://forms.gle/9XucZAN1tBxX8wAV8
- 研究タイトル
- 研究内容、応募理由、テーマへの貢献可能性について(750字〜1,000文字以内)
今後の予定
2022年
9月21日 要旨締め切り
9月下旬 採択通知・顔合わせ
10~11月 非公開研究会
12月 第一回公開研究会
2023年
1月~2月 非公開研究会
3月 第二回公開研究会
4~5月 非公開研究会
6月 第44回大会特定課題研究発表
8月末 学会誌原稿締め切り
2024年
3月末 学会誌刊行
発表の可否は、研究委員会での審査後、2022年9月下旬にお知らせいたします。なお、ご不明な点や質問がございましたら、iesj.research.2021@gmail.comまでお寄せ下さい。 皆様のご応募をお待ちしております。