2014年度特定課題研究 第2回公開研究会

異文化間教育学会第35回大会の特定課題研究第2回公開研究会を、次の通り開催いたします。文化的多様性の実践の具体例、実践の読み解き方、実践と研究のありように関心をおもちの会員の皆様、ふるってご参加ください。

第2回公開研究会

特定課題研究テーマ 「実践をまなざし、現場を動かす異文化間教育学とは」

日時

2014年3月2日(日)13:00-16:30

場所

京都教育大学  F棟F12講義室
〒612-8522 京都市伏見区深草藤森町1番地
アクセス http://www.kyokyo-u.ac.jp/access/access02/
キャンパスマップ http://www.kyokyo-u.ac.jp/campusmap/campus01.html

テーマ

「実践をまなざし、現場を動かす異文化間教育学とは」
 異文化間教育学は、実証科学と実践科学の両側面があり、両者は循環的相互作用過程をもって展開する(江渕,1997)と考えられてきた。現象としての異文化間教育の構造と過程、そして所産と結果を明らかにし、理論を構築する営みを実証科学とし、その研究成果である理論を意図的計画的教育活動の計画と実践に活かすことを実践科学とする。根底には、研究成果としての「理論」とその応用である「実践」という二項対立的な捉え方がある。
 しかしながら、急速に進むグローバル化によるトランスナショナルな現実社会において、異文化間教育学は、既に、この二項対立的な捉え方で対応できなくなっている。理論と実践との関係を捉え直し、多様な文化が交差する現場で、異文化間教育の実践に参与する人々が、多様な対象との相互行為の内に捉えた知を、共有し、編集していくことこそが、今後の学としての異文化間教育を動かしていくものと思われる。そして、その営みは、実践の参与者が己の実践を意味づけ、実践を再編・創造する営みを推進することとともにある。異文化間教育学が境界の学としてあることの意味がここにあるのではないだろうか。
 以上の問題意識から、第35回大会の特定課題研究では、異文化間教育学は実践をいかにまなざしているのか、そして、そのまなざしによって創造される知は、学としての異文化間教育学にどのような変革をもたらしうるのかを議論することにする。また、そのための仕掛けとして、特定課題研究の登壇者間で、ある1つの実践を、異文化間教育学の各領域の研究視点から読み解き、その交差によって多角的、多層的な実践の姿を描き出すことを試みる。これを手掛かりに、異文化間教育学の今後を展望する。

概要

第2回公開研究会プログラム
 第2回公開研究会では、山田千明氏(幼児教育)、田渕五十生氏(人権教育)、野津隆志氏(NPO研究、ネットワーク論)の3名に、自身の研究・現場での実践活動についてのご報告をお願いします。報告を通して、それぞれに「現場の実践にどのようにかかわってきたのか」「理論と実践との関係をどのように捉えて研究活動をすすめているのか」等について語っていただきます。3名のご報告を受け、特定課題研究のテーマ「実践をまなざし、現場を動かす異文化間教育学とは」を巡って、ディスカッションを行います。ディスカッションでは、ディスカッサントとして佐藤郡衛研究委員会委員(異文化間教育)も参加します。参加者数にもよりますが、グループディスカションと、全体のディスカッションで構成する予定です。
 なお、第1回公開研究会では、矢沢悦子さんより、大会当日に紹介する実践事例「大和プレスクール にほんごひろば」について中間報告がありました。その後、グループで「(異文化間教育学に関心のあるあなたは)この実践から何を学んだか」についてディスカッションを行い、最後に、山田氏、田渕氏、野津氏より、それぞれの領域から、実践の読み解きを試みていただきました。

プログラム

  1. 開会と趣旨説明 13:00-13:10
  2. 「私にとっての実践と研究」 13:10-14:40
    山田千明氏(山梨県立大学)専門は幼児教育、多文化保育
    田渕五十生氏(福山市立大学)専門は人権教育、国際理解教育
    野津隆志氏(兵庫県立大学)専門は社会学、NPO研究、ネットワーク論

< 休 憩 >

  1. ディスカッション 15:00-16:20
  • グループディスカッション
    山田班、田渕班、野津班に分かれて、3名の発題をもとに話し合い
  • パネルディスカッション
    パネリスト:発題者3名(山田千明氏・田渕五十生氏・野津隆志氏)
    ディスカッサント:佐藤郡衛氏(目白大学) 専門は異文化間教育
    ※グループディスカッションの報告後、特定課題研究のテーマを巡る話し合い 
  1. まとめ・閉会 16:20-16:30

参加申込

できるだけ事前にお申し込みください(当日参加も歓迎します)。

問い合わせ先

東京学芸大学 見世千賀子 mchika[at]u-gakugei.ac.jp([at]を@に変更してください。)

異文化間教育学会第35回大会特定課題研究
第2回公開研究会 アンケート とりまとめ

2014年3月2日(於京都教育大学)

参加者:21名(一般参加者9 登壇者3 大会登壇予定者2 研究委員会委員6)
アンケート回収数:9件

<アンケートの回答>

  1. 本日の第2回公開研究会について
    (1) 前半の3人の先生方の発題内容から刺激を受けたことや、詳しく知りたいと思ったこと、更に深く議論したいと思ったことを教えてください。
    • 山田先生の子どもに対する異文化間教育に対して大変興味をもちました。そのため、より詳しいお話をお聞きしたいと思いました。
    • 野津先生の、実践と関わりながら、また迷いながら研究されているお話は説得力がありました。
    • 支援ネットワークの形成に必要な要素は?マンパワーからどう脱却してネットワークへ広げていくのか?研究者が行政・政治とどう関わっていくべきなのか?
    • それぞれの方が、深く実践から課題に取り組み、理論をも念頭に置き、活動されているのを感じることができました。
    • 研究者と実践者の距離は近くなっていると感じました。一方で、研究者/実践者のどちらかの立場の方が、介入・変革につながり易いということもありそうで、興味深かったです。(2) 後半のディスカッションを通して、新たに気付いたことや、疑問に思ったことを教えてください。
    • 実践と研究の結び付け方について考えさせられました。マイノリティへの教育、マジョリティへの教育の関係性について。
    • 参加者各自の研究観・実践観を開示してもらったことが、議論を活性化させてくれた。
    • 最後のまとめをお聞きして、改めて、実践、研究者の立ち位置の大切さを感じました。
    • 異文化間教育は「実践の学」ということを再認識しました。
  2. 大会の特定課題研究に向けて
    「現場をまなざし、現場を動かす異文化間教育学とは」というテーマに関して、考えていること、感じていることがあれば、教えていただけますか。
    • 学校という閉じた環境の中での介入・変革は難しいものですが、少しでも異文化を知ること、マイノリティ教育はマジョリティ教育にもなりうるということを現場の先生にも知ってほしいです。
    • 現場と研究(理論)という関係を探るのに、行政の立場の意見も聞けるといいかなと思います。
    • 「現場に根ざす、現場に貢献できる」と言い換えてもいいのではないでしょうか。また、大学の研究者は、大学の教育が実践の場ではないでしょうか。
    • 「幼児教育」「人権教育・国際理解教育」「NPO研究・ネットワーク論」と3つの領域からの分析の意図はなんでしょうか?その意図が詳細に説明されることで学会(研究委員会)がどのような方向を目指しているのかが分かりやすくなると思います。
    • 短い時間でしたが、大変多くを学ばせて頂きました。機会がありましたら、また参加させていただきたいと思います。ありがとうございました。

以上

企画:異文化間教育学会研究委員会(◎:委員長 ○:副委員長)
◎齋藤ひろみ(東京学芸大学) ○佐藤郡衛(目白大学) ○野山 広(国立国語研究所)
浜田麻里(京都教育大学)  見世千賀子(東京学芸大学)  南浦涼介(山口大学)