異文化間教育学会研究委員会では、今年度の特定課題に関連して、海外在住者を含めた非学会員によるオンライン講演会(全3回、Zoomを活用)を、以下のように企画しております。さまざまな学問領域の幅広い見解に触れるよい機会です。どうぞふるってご参加ください。
第1回オンライン講演会
タイトル:「テリトリー」をめぐる子ども達との人類学的協働研究―南米コロンビアの教員養成過程での取り組みを事例に―
日時
2021年2月13日(土)10:00-12:00
会場
zoom
概要
内紛の記憶が新しいコロンビアでは、都市部とそれ以外の地域での教育、経済、環境といった差異が大きい。その際に課題となるのは、教員がコロニアリズム的観点を超えて子ども達との社会文化的前提や行為を理解することである。本講演では、首都ボゴタ育ちの教員養成コースの学生らが半年間山岳地域にて子ども達と行う「テリトリー」についての人類学的協働研究の実践を取り上げる。特に、子どもとのアクティブな参与観察、子どもが主体で進めるテリトリーマッピング、フォトボイス及びフィールドノートの記述など、具体的にどのように子ども達と協働研究を行うのか、そしてそこから子どもの世界をどう知りうるのかを提示する。また、この共同研究活動が地域の大人の住民をどのように巻き込み、子どもたち自身のその土地での関係性を編み直していくのか、そして、子ども達と共に調査をしていく過程で学生がどう変容していくのかも明らかにしていく。この事例を通して、「子ども」と学ぶ具体的手法について講演参加者らと共に議論を深めていく。
講師
Dr. Alba Lucy Guerrero Diaz, Ph.D. (Education)
コロンビア・ポンティフィシア大学ハベリアナ校教育学研究科准教授
紛争により国内難民となった子ども達の場所やアイデンティティに関するフォトナラティブ研究をはじめ、ラテンアメリカ圏の子どもの教育人類学研究ネットワーク、そして教員養成プログラムにおいて子ども達との人類学的協働研究の取り組みなどを続けている。
使用言語:英語での講演ですが、スライドの日本語訳および自動翻訳の字幕を使用します。
申し込み
以下のフォームにご記入ください
https://forms.gle/F3eymVrXknNzSctK7
申し込み締め切り:2月11日(木)まで。お早めに申し込みください。
参加申し込みされた方には、前日までにZoom URLを含めた詳細をお送りします。
異文化間教育学会 2021年度特定課題に向けて 第1回オンライン講演会のご報告
異文化間教育学会研究委員会では、2021年度特定課題研究のテーマ「異文化間教育実践における社会の共創―葛藤を抱えつつ―」を発展させることを目的として、海外在住者を含めた非学会員によるオンライン講演会(全3回、Zoomを活用)を企画しました。
第1回オンライン講演会は、2021年2月13日(土)10:00-12:00にコロンビア・ポンティフィシア大学ハベリアナ校教育学研究科准教授のDr. Alba Lucy Guerrero Diazから「文化的に多様な教育環境にある子どもと共に知識を生み出す協働実践研究」のタイトルでご講演いただきました。当日は非会員を含めて約30名が参加されました。質疑応答を交えながらご講演いただき、最後の30分程度でディスカッションをし、大変有意義な時間となりました。
最初に、コロンビアの首都ボゴタのポンティフィシア大学ハベリアナ校における教員養成プログラムでの社会実習について紹介され、子ども期(childhood)とテリトリーの概念についてお話がありました。その後、子どもとの研究アプローチとして、テリトリーマッピング、フォトボイス、フィールドノートの記述、教材作成など、具体的な事例も交えながら、子ども達とどのように協働研究を行うのか、そしてそこから子どもの世界をどう知りうるのか提示されました。最後に、子どもとの共同研究活動を通して、世代間の対話が生まれたことや教員養成課程の学生の成長があったことなど、コミュニティや関わった学生へのインパクトについても報告がありました。講演を通じて、子どもたちのエイジェンシーを認識する重要性、子どもたちやコミュニティと共に行う研究の可能性が示唆されました
質疑応答の時間では、日本の学校教育で議論される主体性と本講演で扱われたエイジェンシーとの間にはどのような違いがあるのか、本研究を行う上でどのような葛藤があったのか(コミュニティからの抵抗など)、参加した学校の教員にはどのようなインパクトがあったのかなどの質問をもとに、活発な議論がなされました。
事後アンケートでも、講演内容やテーマについての満足度が高く、今後も海外の研究者によるオンライン講演会の開催を希望する声が聞かれました。一方で、特定課題研究のテーマとのつながりが見えにくい、特定課題研究の位置づけがよく分からないなどの意見もありました。また自動翻訳の精度が低く、事前にスライドの日本語訳を配布し、当日はチャット機能を使用し翻訳をつけるなどの配慮がありましたが、今後英語で開催される講演会の翻訳のあり方について検討が必要だと思われます。
文責 研究委員会 徳永智子(筑波大学)