異文化間教育学における研究方法論を考える
-「移動」をめぐる経験を捉えるために-
第二回公開研究会のお知らせ
研究委員会
2022年度の特定課題研究テーマは「異文化間教育学における研究方法論を考えるー『移動』をめぐる経験を捉えるためにー」である。第一回の公開研究会では、谷口ジョイ会員、本間祥子会員、大川ヘナン会員、住野満稲子会員の4名が各々の研究における研究方法論に焦点を当てて発表をした(第一回公開研究会概要)。第二回の公開研究会では、さらに検討を重ねた4名の発表に加えて、柴山真琴会員を指定討論者に迎え、対話形式で議論を深めていく。その後、参加者の皆様が自分自身の研究方法論について考えながら対話をする場をもつことで、登壇者と共に今後の更なる展開を検討する機会としたい。
登壇者およびタイトル
- 谷口ジョイ(静岡理工大学)
「不可避な移動を経験した子どものことば ー 研究方法論的立場の変化に焦点を当てて」 - 本間祥子(千葉大学)
「ことばの教育実践から捉える子どもたちの移動ー作文活動のプロセスに着目して」 - 大川ヘナン(大阪大学大学院)
「外国ルーツの子どものリアリティーオートエスノグラフィーから捉える『移動』」 - 住野満稲子(明治大学)
「異文化間教育学におけるフェミニスト・スタンド・ポイント認識論の可能性」
公開研究会の流れ
- 13:00-13:05 趣旨説明
- 13:05-13:20 谷口会員の発表
- 13:20-13:35 本間会員の発表
- 13:35-13:50 大川会員の発表
- 13:50-14:05 住野会員の発表
- 14:05-14:45 指定討論+登壇者間対話セッション
- 14:45-14:55 休憩
- 14:55-15:35 ブレークアウトルーム・参加者間対話セッション
- 15:35-15:55 全体の振り返り
- 15:55-16:00 閉会の挨拶
日時
2022年3月27日(日)13:00-16:00
開催方法
zoom開催(要事前申込)
申込先
https://bit.ly/3sMGr1A
※非学会員もお申込みいただけます。
今後、2022年6月の第43回大会での特定課題研究発表に向けて、本公開研究会以外に以下のオンライン講演会を開催します。合わせて、皆様の積極的な参加をお待ちしております(※非学会員もお申込みいただけます)。
異文化間教育学会 2022年度第2回公開研究会報告
研究委員会
2022年度特定課題研究「異文化間教育における研究方法論を考える:『移動』をめぐる経験を捉えるために」の第2回公開研究会を、2022年3月27日(日)13時~16時にオンラインで実施した。事前に44名の申し込みがあり、当日は最大38名(会員22名、非会員6名、研究委員会関係者10名)の参加があった。
周知のとおり、登壇者の4名(谷口ジョイ会員、本間祥子会員、大川ヘナン会員、住野満稲子会員)は、第1回公開研究会の内容よりも、さらに自身の研究方法論に焦点を当てた発表内容とし、さらに柴山真琴会員による指定討論及び登壇者との対話をもとに、ブレークアウトルームにてさらに参加者ら自身の研究方法論について深めることをねらいとした。
前半は、4人の登壇者から15分ずつ話題提供を行なった。谷口会員は「不可避な移動を経験した子どものことば:研究方法論的立場の変化に焦点を当てて」のタイトルで、実証主義的アプローチと解釈主義的アプローチの協働可能性について議論した。続く本間会員は「ことばの教育実践から捉える子どもたちの移動:作文活動のプロセスに着目して」のタイトルで、教員(実践者)であり研究者でもある自身の「解釈の視点」の多層性に着目しつつ、自身の教育実践をリフレクシブに問い直していく過程を報告した。また、同じく解釈的アプローチを採用する大川会員は「外国ルーツの子どものリアリティ-オートエスノグラフィーから捉える『移動』」のタイトルで、当事者(移動する人々)と研究者の視点の間にあるズレについて、オートエスノグラフィーを通した考察を試みた。さらに、批判的アプローチをとる住野会員は「異文化間教育学におけるフェミニスト・スタンド・ポイント認識論の可能性」のタイトルで、アメリカにおけるラティーナ女学生の「空間の移動」を事例に、スタンド・ポイント認識論の方法論的可能性を提示した。
後半は、2つのグループを設定し、数とキャリア経験のバランスを見て参加者を振り分けて議論を行った。いずれのグループも第1回公開研究会に比べ、発表内容及び指定討論の枠組みが焦点化されたことにより、リサーチデザインや調査手法の背景にある認識論・存在論について省察や議論を深めていた。
事後アンケートでは、多くの参加者が本テーマに関心を持ち、学びを深められたことがうかがえた。一方で、課題としてブレークアウトという参加型のセッション前に多くの参加者が退出してしまったことは一つ課題としてあげられる。参加者のアンケートに「今回のように研究方法論のように研究と直接関わるテーマで、大学の教員が自分の詳しくない部分への発言を求められたり議論するということは、わりと勇気のいること」とあった。確かに、キャリアの初期段階にある大学院生の多くは積極的に自己省察をしながら参加できていたが、本テーマに触れる機会があまりなかった大学教員・研究者らにとっては、必要な議論でありながら議論をするのが容易だとは限らないと言える。大会時には、ある程度キャリアを積んだ研究者らも共に思考や議論を深める機会となるようにしたい。